YAGIRI BREWERY
No.009 — BREW LOG

酒税が統一されても、クラフトビールは安くならない?

2026.11.04 / 約7分で読めます 文・監修:矢切ブルワリー
POINT

酒税は「お酒の量(リットル)」にかかる税。値段ではなく、量で決まる
2026年10月の統一で、ビールと、麦芽比率50%以上の発泡酒は減税。麦芽比率25%未満の発泡酒や新ジャンルは増税。クラフトビールがどれに当たるかは、銘柄ごとに違う
クラフトビールの1杯にかかる酒税は、値段の約4〜5%。税が動いても、値段はほとんど動かない

2026年10月1日、ビール系飲料の酒税が、1つの税率にそろいました。ニュースでは「ビールは減税」と伝えられ、「統一されたのだから、お酒全般が安くなる」と受け取っている方もいるようです。クラフトビールも、安くなるのでしょうか。

結論から言うと、そうとは限りません。理由は、酒税の仕組みにあります。

1. 酒税は、お酒の「量」にかかる税

酒税は、お酒を造った工場(製造場)から出した**量(リットル)**に対してかかります。値段に何%、という税ではありません。たとえば、1キロリットル(1,000リットル)あたり155,000円なら、1リットルあたり155円です。

国税庁は、酒税が「最終的に消費者負担を予定している税」だと説明しています〔1〕。つまり、税が上がれば価格に上乗せされ、下がれば価格から引かれる、という考え方です。ただし、実際の店頭価格は、お店ごとの判断で決まります。

2. 2026年10月に、何が変わったのか

ビール系飲料の税率は、2020年10月から3段階で見直されてきました。2026年10月に、1キロリットルあたり155,000円(350ml換算で54.25円)に統一されました〔2〕。350ml換算の税額で見ると、次のとおりです〔2〕。

2020年10月 2023年10月 2026年10月
ビール、発泡酒(麦芽比率50%以上) 70円 63.35円 54.25円
発泡酒(麦芽比率25%未満) 46.99円 46.99円 54.25円
新ジャンル 37.8円 46.99円 54.25円

※ 2020年10月より前は、ビール77円、新ジャンル28円でした〔2〕。

つまり、ビールは見直し前の77円から約23円下がり、発泡酒と新ジャンルは上がりました。「統一」とは、高いものを下げ、安いものを上げて、同じにそろえる、という意味です。

3. 麦芽比率による区分は、なくなった

少し前まで、発泡酒は麦芽の使用割合(麦芽比率)で、税率が分かれていました。ただし、麦芽比率が50%以上の発泡酒は、もともとビールと同じ税率です〔4〕〔5〕。1キロリットルあたりの税率は、次のとおりです〔3〕。

区分 2023年9月まで 2023年10月〜2026年9月 2026年10月〜
ビール、発泡酒(麦芽比率50%以上) 200,000円 181,000円 155,000円
発泡酒(麦芽比率25〜50%未満) 167,125円 155,000円 155,000円
発泡酒(麦芽比率25%未満) 134,250円 134,250円 155,000円
新ジャンル 108,000円 134,250円 155,000円

2026年10月からは、どの区分も155,000円です。麦芽比率で税率が変わる、という仕組みは、ビール系飲料ではなくなりました。ただし、ビールか発泡酒かという品目の区分は残っています。

4. ビールと発泡酒は、何が違うのか

酒税法上の「ビール」は、麦芽、ホップ、水などを発酵させたもので、麦芽比率が50%以上のものです〔4〕。副原料のうち、果実やコリアンダーなどの香味料は、麦芽の重さの5%の範囲内でなら、使えます〔4〕。これは、2018年4月の改正で広がった範囲です。それまでは、麦芽比率が67%以上必要で、果実や香味料は使えませんでした〔4〕。

この範囲を超えると、発泡酒になります。フルーツやスパイスをたっぷり使ったクラフトビールが、発泡酒になる理由は、ここにあります。税率が統一されたいまも、ビールか発泡酒かという品目は残っていて、ラベルの「品目」表示も変わります。

5. 「安くなる」は、本当か

ここまでの数字を、クラフトビールの1杯に当てはめてみます。税率は1リットルあたりの金額なので、容量をかければ、1杯の酒税が出ます。

容量 2026年9月まで(ビール、麦芽比率50%以上の発泡酒、181,000円/kl) 2026年10月から(155,000円/kl) 差
240ml 約43円 約37円 約6円減
470ml 約85円 約73円 約12円減
容量 2026年9月まで(麦芽比率25%未満の発泡酒、134,250円/kl) 2026年10月から(155,000円/kl) 差
240ml 約32円 約37円 約5円増
470ml 約63円 約73円 約10円増

つまり、同じクラフトビールでも、品目と区分によって、1杯につき数円〜十数円、減ったり増えたりします。 フルーツやスパイスを使って発泡酒になっても、麦芽比率が50%以上なら、ビールと同じく減税です。 なお、麦芽比率25〜50%未満の発泡酒は、2023年10月から155,000円で、今回は変わりません。どれに当たるかは、使う原料や麦芽比率で決まるため、銘柄ごとに違います。

6. なぜ、クラフトビールの値段は、ほとんど動かないのか

数円の動きが、値段にほとんど影響しないのは、クラフトビールの1杯にかかる酒税が、もともと小さいからです。

たとえば、レギュラー(240ml)が900円のビールなら、2026年10月からの酒税は約37円で、値段の**約4%**です。ビッグ(470ml)が1,400円なら、約73円で、**約5%**です。

一方、350ml缶のビールは、酒税が54.25円です。仮に缶の値段を250円とすると、約2割にあたります(あくまで計算例です)。缶ビールの酒税の割合は、クラフトビールの数倍です。だから、缶ビールの値段は、酒税の増減で、はっきり動きます。クラフトビールの値段を決めているのは、原料、造る手間、熟成の時間といった、別の要素です。

7. 国税庁は、何と言っているのか

国税庁は、2026年7月1日に、酒類の事業者団体へ、酒税の増減税分を価格に適正に転嫁するよう、改めて要請しました〔1〕。そのなかで、酒税の増減税に合わせた価格の見直しの際に、近年の原材料費や物流費などの上昇分の価格転嫁を妨げるものではない、とも述べています〔1〕。

つまり、酒税が下がっても、原料や物流のコストが上がっていれば、その分を価格に反映することは、認められています。いまのお店の価格は、酒税だけでなく、こうした複数の要素の結果です。

まとめ

  • 酒税は、量(リットル)にかかる税で、2026年10月に、ビール系飲料が1つの税率にそろった。
  • 統一で、ビールと麦芽比率50%以上の発泡酒は減税、麦芽比率25%未満の発泡酒や新ジャンルは増税になった。クラフトビールは、品目と区分によって、1杯あたり数円〜十数円、減ったり増えたりする。
  • クラフトビールの1杯にかかる酒税は、値段の約4〜5%。酒税が動いても、値段はほとんど動かない。

次の記事では、クラフトビールの値段を決めている、原料や造り方、そして2026年のコストの動きについて書く予定です。

参考文献(5件・押すと開きます)

  1. 国税庁, 酒税法の改正に伴う増減税相当額の適正な転嫁等について(令和8年7月1日付の要請を含む). https://www.nta.go.jp/taxes/sake/kaisei/index.htm
  2. 財務省, 酒税(酒税改正(平成29年度改正)について、酒税の税率). https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d08.htm
  3. 国税庁, 酒税法等の改正のあらまし(令和5年度税制改正), 令和5年4月, 資料3-1「酒税率の改正について(平成29年度改正)」. https://www.nta.go.jp/taxes/sake/sozei/pdf/01.pdf
  4. 国税庁, 平成29年度税制改正によるビールの定義の改正に関するQ&A, 2018年3月(令和元年9月改訂). https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0018004-031_01.pdf
  5. 国税庁, 発泡性酒類の段階的な税率変更に係る品目及び税率適用区分の表示方法の手引き, 令和5年8月. https://www.nta.go.jp/taxes/sake/pdf/0023008-027.pdf
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